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杉本優のRSI(反復性過労障害)・音声入力ソフト情報ページ


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RSI・腱鞘炎・肩こり・・・上肢障害を検索する

注:
この文章は、ITI日本語ネットワークの会誌"Japanese Network Bulletin"第25号(2002年4月発行)に掲載したものです。24号では英文でRSI対策に関する文章("RSI — Don't live with it!"、いずれ和訳を日本語サイドに掲載する予定です)を掲載したのですが、その続編として書いたこの文章では、読者が翻訳者ということもあり、RSIそのものに関する話題からは少々外れて、RSI関連の用語について考察しています。

RSIって何のこと?

今回もしつこくRepetitive Strain Injury(RSI)の話です。

前回の説明(RSI — Don't live with it!)で、RSIのことを日本では反復性過労障害または頚肩腕症候群と呼んでいると書きました。ところが実際には、日本人の知人に「パソコンの使いすぎで腕が痛い」という話をすると、100%間違いなく「腱鞘炎?」という返事が返ってきます。

困った時のGoogle頼みでいつものように検索してみると、結果は以下の通り。確かに腱鞘炎に関するヒットが群を抜いて多いのです。

最後の4つはいずれもRSIの日本語訳で、訳語が定着していないことが窺われます。ではRSIという英略語のままで入ってきているのかと思って「RSI は」で検索してみると、約10,400件と一見多いようですが、実はヒットのほとんどはRepetitive Strain Injuryではなく、証券用語であるRelative Strength Index (相対力指数)でした。ヒットを絞るために「RSI は Repetitive」としたら約100件、「RSI 反復」で約368件という数字になりました。

腱鞘炎はRSIか

腱鞘炎という言葉はたいていの日本人が聞いたことがあるようです。英語ではtenosynovitisと呼ぶようですが、日本での腱鞘炎の認知度と比べると、英語圏での認知度はだいぶ落ちます。

念のために説明すると、腱鞘というのは文字通り腱を包む鞘状の組織で、ここに炎症が起きると腱鞘内での腱の滑りが悪くなり、動きが阻害されたり痛みが生じたりします。炎症の場所や症状によって細かな区別があり、代表的なものとしては、指がスムーズに曲げ伸ばしできなくなるばね指(trigger finger)と、親指の付け根が痛むド・ケルヴァン病(De Quervain's disease)があります。手首や肘、肩の腱鞘炎も存在しますが、一般には腱鞘炎といえば手に起きるものと思われています。

腱鞘炎とRSIの関係を図にすると右のようになり、腱鞘炎はRSIという大枠の中にくくられる個別症状のひとつと言えます。

腱鞘炎だけがよく知られ、診断を受けていない人でも手や腕に痛みがあると「腱鞘炎か」と思う、という現象は日本独特のものですが、同様の事が実はアメリカでも起きています。アメリカの場合は腱鞘炎ではなく手根管症候群(carpal tunnel syndrome)という症状がよく知られていて、検索結果にもそれがはっきり現れています。

手根管というのは手首の掌側にある骨と靭帯から成るトンネル状組織で、ここで腱や腱鞘が炎症を起こした結果、中を通る神経が圧迫されて掌や指に痺れや痛みを起こすのが手根管症候群です。アメリカではCTSという略称でも通用するくらい手根管症候群がよく知られており、そのため本当は手根管症候群ではないのに手根管症候群と誤診され、効果のない手根管開放手術を受けるはめになったなどの問題が起きており、RSIに関して"IT'S NOT CARPAL TUNNEL SYNDROME!"という題の本が出ているほどです。

頚肩腕症候群、腱鞘炎、RSI

次に頚肩腕症候群という言葉を見てみると、名前の通り首・肩・腕(特に上腕)の凝り・痛み・痺れが主な症状とされているらしく、特に肩こりや胸郭出口症候群など肩周辺の症状に関する話が多くて、肘から下の部分だけに症状が出ている場合は頚肩腕症候群とは言わない場合が多いようです。検索ヒットの中には「手指前腕の障害および頚肩腕症候群」という表現が出てくるものもありました。胸郭出口症候群(thoracic outlet syndrome)は、首から腕に向かう神経や血管が鎖骨付近を通る部分で圧迫され痺れや痛みを起こすものです。先ほどの図に頚肩腕症候群を加えると、こんな感じになるかと思います。そうすると、手根管症候群や、私の症名である上腕骨上顆炎(epicondylitis、いわゆるテニス肘やゴルフ肘)は頚肩腕症候群にも腱鞘炎にも当てはまらないことになってしまい、日本ではこうしたRSI症状までカバーする名称は今のところないということになります。

英語では

では英語圏ではRSIという言葉が定着しているのかというと、これも一筋縄ではいかないようです。アメリカではRSIよりもCTS(手根管症候群)の方が認知度が高いことは前述しましたが、総称についても実は英語圏でもいろいろと議論があります。RSIというのはもちろんRepetitive Strain Injuryの略ですが、実際には必ずしも障害が作業反復の多少と関連していると言えない場合もあるため、この名前は好ましくないとする医師がかなり多いのです。

そのため代替名称がいろいろ考えられているのですが、どの名称を使うかは国によって違うようです。

例えば、アメリカではCTD(Cumulative Trauma Disorder、蓄積外傷性障害等と訳す)という表現がRSIよりも好まれるようで、問題は「負荷の反復」ではなく「外傷の蓄積」というわけです。2月最後の日はInternational RSI Awareness Dayですが、提唱したアメリカの組織はCTD Resource Network(CTDRN)という名前です。

RSIが大きな問題としてクローズアップされたオーストラリア・ニュージーランドでは、OOS(Occupational Overuse Syndrome、職業性過使用症候群)という表現が公的な認知を受けています。反復とか蓄積とか細かいことは言わず、とにかく仕事で使いすぎるのが原因という、大らか(?)なネーミングです。

イギリスではさらに大雑把で、Health & Safety Executive (HSE)ではWRULD(Work Related Upper Limb Disorder、作業関連上肢障害)という用語を使っています。仕事に「関連」する上肢傷害とはずいぶんあいまいですが、逆に定義を限定しすぎないよう配慮した表現とも言えます。ところが問題は、その上肢傷害が「仕事に関連」しているのかという判断が難しいことで、RSI裁判などもこの点が焦点になります。例えば患者が学生だったり手を使う趣味を持っていたりして、同じ症状でも仕事に関連しているとは言えない場合には、WRULDからWRを落としたULD(Upper Limb Disorder)という表現が使われます。

前述のInternational RSI Awareness Dayも、そうした状況を考慮し、世界的に最も通りが良いRSIという表現を選んだのではないかと思います。

なお、WRULD(=RSI)の診断に関するHSEの資料、A REVIEW OF DIAGNOSTIC CRITERIA FOR WORK-RELATED UPPER LIMB DISORDERSの中に、WRULDに含められる症名のリストがありますので、参考までにここに紹介しておきます。

肩こりの英語

ところで、以前から気になっていたことがひとつあります。「肩こり」を英語で何というか?という疑問です。

辞書で調べるとたいていstiff shoulders等と書いてあるのですが、どうもしっくりしません。また、「英語には肩こりにあたる表現がない。それは西洋人は肩こりにならないからだ」などという話も聞きます。確かに日本人と西洋人の体格の違いも影響するのかもしれませんが、日本人でも肩こりに悩まされない人はいるし、西洋人にも華奢な人はいるわけですからこれはちょっと疑問です。肩こりは先に書いた通り、頚肩腕症候群の主要症状のひとつとされており、コンピュータを長時間使用する人や腕を上げた状態で作業する人(手話通訳者など)に多いといいます。ならば肩こりがWRULD/RSIのひとつとして定義されているはずではないか?と思い、ついでに調べてみました。

するとまず出てきたのが次の表現です。

以上のように結局はっきりした答えは得られなかったのですが、痛み、特に筋肉など軟組織に起きる痛みは医学界でも比較的研究が進んでいない分野なのだそうで、RSIの症状で検査してもらうと診断が二転三転するということがよくあります。前半で紹介したRSI関連の名前の混乱もこのあたりと関連するようで、肩こりの場合も同じことが当てはまるのかもしれません。

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更新日: 2002-12-30